テレビやCMで弁護士を探す

テレビCMをする法律事務所が増えました。

弁護士がテレビに出て好き勝手なことを話す機会も増えました。

 

一般の方からすると、テレビでCMをするくらいの大手の事務所、テレビでよく見る有名な弁護士さん、という認識になってもおかしくないですよね。

でも、レギュラーでテレビに出るような弁護士とか、テレビCMを流す法律事務所とかで、同業者から評判がよいなんてこと、あんまりないです。

はっきり言って、逆です。

 

それって、ひがみでしょ?

 

などと勘違いされるのが嫌なので、普段は一般の方の前では言いません。

けれども、実際に弁護士としての仕事のやり方や結果から見て、マスコミ大好きな弁護士たちの多くが、良い評価をしにくいんです。

 

弁護士業は、本来、職人技です。一つ一つの事件がハンドメイドなんです。どんなに優秀でも、一度に引き受けられる事件数には限りがあります。

なので、すでに職人としての評価が確立していて、一定の顧客基盤のある弁護士にとっては、過剰な広告は有害無益です。

 

これに対して、莫大な広告費をかけてテレビCMや地下鉄広告などを打つ法律事務所は、本来職人技であるはずの弁護士業務を、なるべく定型化して、安い給料で大量に雇った新人弁護士や事務員に流れ作業のようにやらせることで規模の利益を生むという、新しいビジネスモデルを構築しています。

 

弁護士は一人一人が職人である以上、法律事務所の大小にかかわらず、一人の弁護士が担当できる仕事量には、限界があります。

広告宣伝で、一人の限界を超えた仕事が集まってきても、実際に事件処理に当たる一人一人の弁護士は、別にうれしくありません。給料は一定であることがほとんどです。あなたの依頼に対する仕事の結果も、別に良くなりません(忙しすぎて悪くなることはあり得ます)。

うれしいとしたら、それらの弁護士を安く雇っている「ボス弁」(その法律事務所を経営している弁護士)だけです。

 

もしあなたが、職人の工房と大量生産の組み立て工場を見比べて、工場のほうが大手で機械化されているから品質も安定していて信頼できるはずだと思えるなら、弁護士もテレビCMで選ぶと相性が合うでしょう。

 

同じように、テレビでよく見る有名な弁護士のほうが好感が持てて実力もありそうだと思えるなら、そういった人に依頼すれば満足度が高いでしょう。

たとえ、その弁護士が、あなたの仕事を新人に任せて、自分はテレビ局で打ち合わせに熱中しているとしても、あなたはその間にも、あの有名な弁護士に依頼している、という安心感を買うことができるのです。

 

ああ。ちょっと皮肉がすぎました。

 

ちなみに、テレビに出ている弁護士が、それだけで全員信用できないなんて言いたいのではありません。専門分野での経験が高く評価されているために、特定の事案に限ってコメントを求められる弁護士もいます。

ただ、事件に対するコメントも、多くはテレビ局お抱えのいつもの弁護士や、スポンサー法律事務所の所属弁護士がやっています。

経験や実力が評価されているのか、単に縁故や肩書きでコメントしているのか、普通の人には、まず見分けられないでしょう。(要するに、前者である場合は、非常に少ないということです。)