法テラスを使うと、嫌がられますか?

法テラス(日本司法支援センター)を利用すると、弁護士費用がかなり安くなります。

受任する際の着手金などが安くなるだけではなく、相談料を3回まで無料にしてもらったり、弁護士費用を立て替えて(分割後払いにして)もらったりできます。

ただし、資力が十分でないことが条件であり、資産について一定の審査を受ける必要があります。また、法テラスを利用するには、その弁護士が法テラスと契約していることが必要です。

(法テラスについて細かいことは、別の項目で書きますね。)

 

さて、法テラスを使って弁護士費用が安くなれば、依頼者にとっては良いことですが、弁護士側には特にメリットがないと思います(ここ、重要です!)。それで、弁護士は嫌がらないのでしょうか?

 

正直言って、「弁護士による」というのが、答えです。

そもそも法テラスに対する考え方が弁護士によってかなり違うため、断言しにくいのです。

 

それを前提に一般的な傾向を言うと、次のようになります。

 

従来、お金のない人のための民事法律扶助や国選弁護などは、多くの弁護士にとって、プロボノ活動(ボランティア)と考えられていました。だから、以前なら、いわゆる人権派・市民派の弁護士が弁護士費用と無関係に対応するのが普通でした。また、はじめからそういうことに興味の無い企業法務系の弁護士は、見向きもしませんでした。

しかし、法テラスができたころから弁護士が増やされ、仕事が少ない弁護士も出てきた結果、法テラスで民事法律扶助や国選弁護をたくさん扱わないと食べていけないという弁護士が、かなり増えました。企業法務系の弁護士でも、そういう人が出てきています。

そこで、今は、昔ながらのプロボノ活動として費用度外視で法テラス事件を扱う弁護士と、法テラス事件をやらないと食べていけない弁護士がいて、後者がどんどん多くなっているという状況です。

 

法テラスを使うかどうかも、この状況を前提に考えてください。

 

 

そのうえでまず、契約していない弁護士に法テラスを使ってやってくれと頼むのは、筋違いです。やめましょう。事件ごとの個別契約という制度もあることはありますが、おすすめできません。

法テラスを利用したい場合は、最初から法テラスと契約している弁護士を探しましょう。 

 

契約している弁護士であれば、条件に合う人は法テラスを使って安い費用で依頼してくることが、最初からわかっているはずです。

ですから、法テラスを使ったから嫌がられるとか、手抜きをされるとかは、一般的には考えなくて大丈夫です。

資力に問題があって、弁護士を必要とする人は、法テラスを積極的に利用してください。本来、そのためにあるのですから。

 

ただし、法テラスには確かに色々な問題があり、払われる費用も極端に安いため、弁護士としては割に合わないことが実際に多いのです。

そのため、契約弁護士の中にも、「法テラスが出す安い費用の範囲内で、赤字にならない程度のやり方でやる」と考えている弁護士は、それなりにいます。これは、刑事弁護における国選と私選の違いと似ています。

また、契約弁護士であっても、法テラスの安い費用で割の合わない特定の種類の事件は受任しない、と決めている弁護士もいます。

 

「この事件は、法テラスだと赤字になるから受任できない」と正直に言ってくれる弁護士は、かえって親切です。そうは言わずに違う理由で断ろうとする弁護士のほうが、ずっと多いでしょう。

もっと困るのは、黙って受任しておいて、内心で「安い費用に見合ったやり方でやる」と考えている弁護士です。そんな弁護士、そう多くはないと信じたいですが、いることは確かです。

 

そういう弁護士を見分けることは、容易でないかもしれません。

安全策としては、法テラスを利用した「DV事件」「外国人事件」「少年事件」あたりを普段から扱っている弁護士を選ぶ、ということが考えられます。

これらの事件は、割の合わない事件の典型例です。こういう事件を嫌がらない弁護士なら、法テラスを嫌がるということは考えられません。

 

それと、弁護士費用を低く抑えたいからといって、資力を隠して法テラスの利用を持ちかけるのは、絶対にやめましょうね。残念ながら、ときどき経験します。まともな信頼関係が築けるはずもないし、事件の良い解決も望めませんよ。

自分の資力で法テラスが利用できるかどうかを質問することは、全然構いません。