離婚事件を依頼するなら?

離婚事件を依頼するなら、どっちの弁護士がいいでしょうか?

 (1) 男性,女性

 (2) 既婚,未婚

 (3) 子どもあり,子どもなし

 (4) 離婚経験あり,離婚経験なし

 
結論:
どれも弁護士としての実力とは全く関係ありません。これらの事情だけで弁護士を選ぼうとするのは,間違いのもとです。
 
 
弁護士は,自分自身の人生経験(体験)に基づいて,依頼された事件に対する助言を行うのではありません。
あくまでも,法の専門家として総合的かつ客観的な立場から,その依頼者のために一番よい道が何かを一緒に考える役目を負っています。
 
弁護士としての事件処理の経験(キャリア)と個々の人生経験(体験)は,まったく別の物です。
もちろん,その弁護士の人生経験の深さが,事件処理の豊富な経験と相まって,弁護士の実力を高めることはあるでしょう。
しかし,1人の人間の人生経験は,どれほど波乱な生涯であっても,物事の一面にすぎません。依頼者である皆さんは,必ずその弁護士とは異なる人格と体験をもっています。弁護士が,自己体験のみに基づいて助言を行えば,必ず偏り,誤りを生みます。
弁護士が自己体験を強調する場合,むしろ信頼性に疑いを持つべきだ,というのが私の意見です。
 
これは,なにも離婚事件に限りません。
たとえば,弁護士自身が過去に犯罪の容疑者として警察のお世話になったことがなければ刑事弁護ができない,なんてことはあり得ませんよね。
弁護士としての当該事件の処理の経験と,その弁護士の個人的な体験を区別するようにしてください。
 
もちろん,依頼者と弁護士が同じ体験(たとえば離婚)をしているとか,同性であるとかいったことで,その弁護士と話しやすいとか信頼できるとか思えるのであれば,それは大変良いことです。
そのような観点で弁護士の体験を考慮したいのであれば,十分に検討に値します。
 
 
一般的に,離婚事件の依頼者になるのは女性の方が多く,離婚の問題は女性同士のほうが話しやすいと考える方が一定数おられる一方で,女性弁護士は男性弁護士よりも数が少ないため相談が集中しやすいという傾向がありました。そのため,これまでは,女性弁護士であれば離婚事件の相談を受ける機会が多かったと言えます。
しかし,最近では弁護士の数も増えて相談の集中という状況は減り,離婚事件を扱う男性弁護士も増えました。
そういう意味でも,性別や体験で弁護士の選択肢を狭めるのは,得策とは言えません。