外国人事件を引き受ける弁護士は,少ないの?

結論:積極的に引き受ける弁護士は,かなり少ないでしょう。だからこそ「外国人事件を嫌がらない弁護士」というのが,良い弁護士探しのための指標のひとつになります。

 

 

外国人事件には,二種類あります。

 

ひとつは,通常の事件で当事者(依頼者)が外国人であるもの。単に「外国人事件」と言ったときは,こちらを指すことが多いでしょう。以下でも,「外国人事件」と言った場合はこれを指すことにします。

「外国人事件」では,多くの場合に通訳(のための時間と費用)を必要とすること,日本の国内法以外にも外国人の本国での法律関係を調査する場合もあること,などに特色があります。その分,日本人を当事者とする同じ事件よりも明らかに大変になります。

しかし,その労力に見合った弁護士費用を支払える(外国人)依頼者は,決して多くありません。そのため,外国人事件を受任しようとする弁護士は,結果的に通常事件とそれほど変わらない金額での受任を迫られることになります。

したがって,外国人事件の多くは,労力と対価が釣り合いません。まして,それが法テラスを利用した民事扶助事件である場合,当該事件の通常の弁護士費用より安く算定されていますから,弁護士にとっての労力と対価の不均衡は著しいと言えます。

弁護士も職業として成り立たたなければ生きていくことができませんので,当然のことながら「外国人事件」は「大変なのにお金にならない(赤字になる)事件」の代表例として,多くの弁護士から嫌がられる傾向にあります。

ただし,「外国人事件」は,たまたま依頼者(または相手方)が外国人というだけの通常事件ですから,ある程度の経験を積んだ弁護士であれば,何度か扱った経験があるのが普通です。

 

もうひとつの種類の外国人事件とは,外国人が日本に出入国したり,滞在したりすることに関して,日本の入国管理局を相手方とする事件,いわゆる「入管事件」です。難民認定事件も含まれます。

この場合も,当事者(依頼者)が外国人ですから,通訳を要することなどは同じです。そのうえ,扱う法律が入管法(出入国管理及び難民認定法)という非常に特殊な法律であり,相手方は法務省入国管理局という極めて厳格なお役所になります。当事者が入管に拘束されている場合には,場所的制約も大きくなります。

こうした特殊性から,入管事件をまともに扱える弁護士は,全国的に数少ないと言えます。扱った経験のある弁護士自体も少ないでしょう。一度経験した結果,二度とやりたくないという声も聞きますね。

実は,入管は弁護士バッチがそのままでは通用しない世界でもあります。入管事件を扱うためには,弁護士会を通じた特殊な登録を必要とします。そのこと自体を知らない弁護士のほうが,圧倒的に多いかもしれません。

 

今は弁護士が増えて,一度も扱ったことのない種類の事件でも「取扱い事件」に含めて広告している弁護士(特に新人・若手の弁護士)がたくさんいます。それでも,やる気と基礎的な能力があれば,おそらく大丈夫です。

経験があって,かつ受任に積極的な弁護士にターゲットをしぼって探すことは,なかなか困難かもしれませんね。出会えればラッキーでしょう。