弁護士法人と普通の法律事務所の違いは?

結論:複数の地域に支店事務所を出して,手広く事業展開しようとしている,または,いつかそれを目指そうとしているのが弁護士法人です。

 

 

個々の弁護士業務の観点から言うと,弁護士法人と弁護士法人でない法律事務所とで,決定的な違いはないと考えられます。同じ事件なら,弁護士がやるべきことは同じだからです。

 

両者の最大の違いは,弁護士業を普通の会社と同じような感覚で捉えるかどうかです。普通の会社と同じに考えれば,営利事業として地域を越えて手広く展開しようとか,所属する弁護士(社員)が適宜入れ替わることを前提に考えよう,となります(弁護士法人)。そうではなく,1か所の事務所でこなせる範囲で,その弁護士限りの職人仕事として考えているのが,弁護士法人でない法律事務所です。

違いは,事務所を代表する弁護士の価値観や目的意識の差にあります。

 

弁護士法人最大の特徴は,本店事務所以外にも複数の地域で支店事務所を出せる(複数の法律事務所を持てる)ことです。これに対して,法人でない法律事務所は1か所だけに限られます(支店を出すことができません)。

※最近は,「弁護士法人」という名称がつくと箔が付く(顧客に信用されやすい,安心してもらえる)等の理由で,支店を出さない弁護士法人も増えています。支店がなく,支店を出す意思もない場合,信頼感アップ以外であえて弁護士法人にしなければならない理由は、あまり見当たりません。ある種の節税目的くらいかなぁ。

 

もちろん,たくさん事務所を出せるから弁護士法人のほうが優れている,という単純な話ではありません。

弁護士法人は,複数事務所での事業展開を認めてもらう代わりに,法律上の様々な規制を受けています。

その結果,弁護士法人においては,原則として事件の依頼を受けるのが個々の弁護士ではなく弁護士法人(法律事務所)になるという特徴があります。(例外的に弁護士法人であっても弁護士個人による受任となる場合は,個人受任であることを契約書でも相手方に対しても明示しなければなりません。)

 

法人でない法律事務所でも,弁護士が複数人または全員で事件を受ける事務所はありますが,弁護士法人では(弁護士ではなく)弁護士法人が受任し,所属弁護士が連帯責任を負います。

規模の大きな事務所で,全事件に対して全弁護士が連帯責任を持つ(持たされる)ということは,依頼者側からすると一定の安心感があるでしょう。

しかし,すべての事件について全弁護士共同で事件処理に当たるなどということは,実際にはあり得ません。

大きな弁護士法人に依頼しても,実際に事件を担当する弁護士はその中のごく一部になります。

したがって,良い弁護士を選ぶためには,弁護士法人かそうでないかは関係が無く,自分の事件を担当してくれる弁護士が誰で,その人がどんな弁護士なのかをよく見極めなければなりません。

。 

その意味で,法人かどうかでの違いは無い,という結論になります。

 

ただし,ここでも本当中の本当のことを書いてしまえば,弁護士法人の支店事務所にいるのは,ほとんどが安い給料で雇われた新人または経験の少ない弁護士です。

そうでなければ,弁護士法人本来のビジネスモデルは成功しないでしょう。各地に支店を出す経営拡大路線と,集中広告等による経営効率化を両立させるには,安い費用で弁護士の頭数を揃えることがどうしても必要になるからです。

 

十分な経験のある弁護士が雇われの立場で弁護士法人の支店に派遣されるなんてこと,普通は考えられません。雇う法人側にも,雇われる弁護士側にも,ほとんどメリットがありませんからね。

もちろん,弁護士法人の経営弁護士はベテランかもしれませんし,何事にも例外はあるものですが。

 

……どこかの弁護士法人から営業妨害で訴えられたらどうしよう。