法テラスは良い弁護士を紹介してくれるの?
結論:原則として,契約弁護士を名簿順で無作為に割り当てているだけです。
法テラス(日本司法支援センター)は,法律に関係しそうなトラブルを抱えている人に対して,(1)どの専門家に相談するといいのかを教えてくれたうえで,(2)基準よりも収入が少ない人には,一定の審査を経て,相談料の無料化や専門家の費用の立て替え(分割払い)などをしてくれます。
よく,「法テラスで弁護士を紹介してもらう(もらった)」というようなことをおっしゃる方がいますが,誤解している(というより,わざと法テラスが誤解させている面がある)と思います。
実は,法テラスは,(犯罪被害者支援などの例外を除いて,)基本的には弁護士の紹介などしていません。上記の(1)と(2)だけです。
まず,(1)について,法テラスが,どの専門家に相談するといいのかを教えるというのは,その問題について相談する専門家として弁護士がいいのか司法書士がいいのか,とかいった話です。弁護士の中でどの人がいいのかというレベルの話には,タッチしません。
たとえば,弁護士への相談が望ましい事案だった場合,こういうところで弁護士に相談できますよ,という情報を教えてくれます。
具体的には,その法テラスの地方事務所で行っている扶助相談(無料相談)の日程を案内・予約したり,近くの弁護士会や市区町村などの自治体で行っている法律相談の日程を案内したりしてくれます。特に希望すれば,相談者の家の近くにある法律事務所を名簿からいくつかピックアップして教えてくれるでしょう(事務所の住所が家に近い順に,名簿検索した結果をそのまま伝えるだけです)。
これは言ってみれば,自分ではネット検索を上手に使えない不器用な人のために,近くの相談場所や法律事務所を代わりに探してあげる程度の業務です。
次に,(2)について,法テラスは,基本的に弁護士のほうから頼まれたときに,相談料や弁護士費用を支払うことになっています。
弁護士が法テラスに「この依頼者について弁護士費用を立て替えてほしい(民事法律扶助を使いたい)」と言って持ち込んだ事件について,法テラスの基準で依頼者の経済力を審査して,収入が低い人に対して費用の援助を行うのです。
(1)の紹介を受けた人が,どこかで弁護士に相談を受けたり,その弁護士に依頼をしたいと考えたときに,その弁護士を通じて法テラスに(2)の申し込みをすることになります。
ですから,この場合も,法テラスがその弁護士を選んでいるのではありません。
でも,法テラスの事務所で行われている扶助相談(無料相談)を予約した場合,相談者は,まさしく法テラスの事務所に行って,法テラスの紹介した弁護士に法律相談を受けているはずではないか,と疑問に思うかもしれませんね。
それこそが最大の誤解なのです。
法テラスは,(1)の業務を通じて,相談者に相談場所や法律事務所や弁護士の情報提供をしているだけで,推薦しているわけではありません。何の保証もしていません。単に,こういう相談場所がありますよと教えてくれているだけです。
それが,たとえ当該法テラスの事務所内で行われている扶助相談(無料相談)であっても,まったく同じことです。
確かに,法テラスの事務所でも,(2)の業務のひとつとして無料相談を行い,それを(1)の業務として案内しています。
けれども,法テラスの無料相談に来ている弁護士は,法テラスが「選んでいる」わけではないのです。
法テラスと契約している弁護士の名簿の順番に,その日のその時間のその部屋の法律相談者(皆様)が,機械的に割り当てられているだけです。
通常の無料法律相談担当弁護士の名簿順序は,おそらくほとんどの地方の法テラスで単なる「アイウエオ順」だろうと思いますね。
要は,法テラスが無料相談のための部屋を契約弁護士に貸しているようなものです。
そして,相談者がその弁護士に依頼したいと思えば,その弁護士を通じて,法テラスに弁護士費用の立て替えを申し込むことになるのです。
つまり,弁護士を選んでいるのは相談者自身であって,法テラスが相談者の事件の内容を聞いて適切な弁護士に割り当てているのではありません。法テラスは,原則として個々の弁護士の推薦も紹介もしていないのです。そうやって,うまくできているのです。
(ちょっと皮肉的に書いていますが,法テラスはこれでいいし,こうでなければいけないのです。もし,政府機関である法テラスが個々の弁護士の推薦や選別をしはじめるときがきたら,むしろ日本はとても怖い管理社会になっているでしょう。)
いくつかの例外などについては,続きのトピックもお読みください。