【ご質問】
裁判官や警察が公務員なのに、弁護士が自由業と知ってちょっとショックでした。
ということはお金の無い相談者とある相談者では、お金がある方に気に入られたいですよね?
その辺が裁判などで影響するでしょうか?
質問者:りんご さん
(木曜日, 14 6月 2018 21:35)
【回答】
あまりストレートに言うと誤解されるかもしれませんが、回りくどく言ってもやっぱり誤解されると思うので、お答えします。
どんな弁護士でも、お金のある依頼者・相談者のほうがいいに決まってます。
しかし、それが裁判に影響するかという意味では、普通は、あまり影響しないです。
では、影響することもあるのかと聞かれたら、それは場合によってあるでしょうし、事件や弁護士によるとしか言えないですね。
せっかくですから、ちょっと真面目な話をします。
弁護士は民間人であり、営利を目的とした職業のひとつです。
そのことにショックを受けられたそうですが、それは、弁護士の役割について大きな誤解を持たれていたからだと思います。
弁護士は、公務員でなく、民間の自由業であることにこそ、本当に大切な意味があるのです。
なぜなら、私たち民間人が最も重大な権利侵害を受ける場面は、いつの時代も国家による攻撃を受けたときであり、それに立ち向かえるのは、民間人である弁護士だけだからです。
弁護士が公務員なら、誰も国家に立ち向かえません。誰も助けてくれないということです。国家はいずれ、やりたい放題になります。
だから、民間人を守る盾として、弁護士は民間人である必要があるのです。
世界中の国で弁護士の社会的地位を比較すれば、国民と政治の法的な成熟度がよく分かります。
独裁国家や国民意識の未成熟な国家ほど、弁護士が公務員的で国家との結びつきが強かったり、民間人であっても社会的地位や収入が低かったりします。
あるいは、中国をはじめとして、人権派弁護士が国家の攻撃対象になっている国がたくさんあります。
そういう国では、国民の多数も弁護士を守りません。国家と一緒になって攻撃したりします。
日本も今、そういう危険な方向に進んでいると思います。
さて、それはそれとして、もう一度ご質問を見ましょう。
弁護士も職業である以上、お金のある顧客を重視するのは当然です。
聞くまでもないと思います。
ただ、お金があるから弁護士費用が高くなるとは限りません。
弁護士費用は、依頼する事件の中身によって決まるので、その人の資産で決まるのではありません。
資産1億円の人からの依頼でも、資産100万円の人からの依頼でも、弁護士費用50万円の事件は、やっぱり50万円です。
そして、最初に決めた契約金額で依頼を受けた以上、その依頼者にお金があるかどうかと、その事件の処理や裁判には、あまり関係がありません。
もちろん、絶対に影響しないわけではありません。
たとえば、調査活動などで多額の実費がかかりそうなとき、それを払える依頼者と払えない依頼者とでは、結果的に、違いがでるかもしれません。
しかし、それは弁護士のせいではないです。
それから、たとえば取引高の大きい法人の事件とか、個人でも相続事件とかで、事件の中身と依頼者の資産が比例する場合も多いと言えます。
つまり、資産のある依頼者の事件は弁護士費用も高くなりやすく、弁護士にとって収益が上がりやすいです。
また、お金のある依頼者は紛争を抱えることも多いし、人脈も広いので、後日に別の事件の依頼につながりやすい面はあります。
そのため、依頼を受けた当該事件の裁判でやることは同じでも、後々のことを考えて、お金持ちの依頼者に対してだけ露骨に丁寧な扱いをするなんてことも、弁護士によっては、あるのかもしれません。
特に法人相手の仕事をしている法律事務所なら、依頼者の資産規模で対応を変えるのは、ある意味で当然でしょう。
そういうビジネス上の常識は、別に弁護士業務に限りません。
そのほかに気をつけてほしいのは、個人の依頼者が、法テラス(日本司法支援センター)の民事扶助事件を依頼する場合や、刑事弁護で国選弁護人を付ける場合です。
弁護士から見れば、同じような事件で同じような苦労をしても、法テラスの基準に従った異常に安い収入しか得られません。
多くの弁護士は、それでも良いと考えて、同じように頑張ってやります。
しかし、そうではない人も、いる可能性があります。
そういう人格的なことや事務所のカラーや経営方針などもすべて含めて、その弁護士と話してみて「話しやすい」「心地よい」と感じるかどうかで決めればいいのです。
自分に合った本当に良い弁護士は、そうして選んでください。
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